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土地活用の事業計画収支の見方|マンション・アパート経営で失敗しないための判断基準

はじめに

マンションやアパート経営を考え始めると、多くの方がまず
「どんな建物が建てられるのか」「どれくらいの利回りが見込めるのか」
といった点に目が向くのではないでしょうか。

実際のご相談でも、建物の規模や間取り、想定利回りといった話題から入ることが少なくありません。
もちろんこれらも重要な要素ですが、工事企画では「完成した時点で、その物件が市場で売却可能な商品になっているか」という出口戦略を重視します。
投資物件の建築はゴールではなく、事業のスタートです。出口を見据えずに進めた計画は、数字上は成立していても、将来の選択肢を狭めてしまう可能性があります。
この記事では、マンション・アパート経営を検討する際に、事業計画収支をどのような視点で確認すべきかを、コンストラクションマネジメント(CM)の立場から整理していきます。

■ 1. 事業計画収支では、マーケットと買い手属性を加味する

一般的な収支表は「利回り」が強調されがちです。
しかし、私たちが重視しているのは、その数字が市場での売却価格と整合しているかという点です。
たとえば川口エリアであれば、投資家が購入を検討する利回りの目安は、おおよそ5.6〜6.2%程度といわれています。(2025年時点)
この水準を前提に逆算し、土地代や建築費を差し引いたうえで、十分な収益性が確保できているか。そこまで確認して初めて、「市場で評価される企画」だと言えます。
この基準を意識せずに計画を立ててしまうと、完成後に思うように売却できなかったり、想定より価格が伸びなかったりする可能性があります。
また、エリアに合った規模感も重要です。
埼玉県内、特に戸田・川口周辺では、都心部のように7億〜8億円でも買い手がつく市場とは状況が異なります。このエリアは大手投資家よりも個人投資家が主な買い手になるケースが多いため、融資がつきやすく、購入しやすい2億〜3億円程度の規模に抑えることが、現実的な出口戦略として有効です。

■ 2. 事業計画収支は「数字の根拠」まで確認する

事業計画収支では、数字そのものよりも、その根拠が重要です。

●賃料設定の客観性

想定賃料は、計画全体を左右する最も重要な前提条件のひとつですが、その数値に客観的なエビデンスがあるかどうかは必ず確認する必要があります。
楽観的な賃料設定ではなく、エイブルやハウスメイトなどの第三者機関に依頼し、エリアの成約事例や募集実績に基づいた賃料査定(FS:フィジビリティスタディ)で検証することが望ましいです。

●長期的な賃料下落リスク

35年間賃料が一定という計画は、現実的とは言えません。建物の経年や競合物件の増加を考えれば、一定の下落は想定すべきです。
たとえば、5年目以降は年3%程度の下落を想定するなど、やや厳しめの前提で試算することで、より安全性の高い計画になります。

●抜け漏れのないコスト計上

収入だけでなく、支出が網羅されているかも重要です。

  • 固定資産税、都市計画税
  • 管理費、修繕費、設備更新費
  • 保険料や各種諸経費

こうした費用が適切に織り込まれていなければ、初年度の収支が良く見えても、長期ではバランスが崩れます。

事業計画収支は「数字を並べる資料」ではなく、
前提条件をひとつずつ検証するためのツールです。
数字の精度は、そのまま事業の安心度に直結します。

■ 3. 「破綻しやすい計画」チェックリスト

実務の中でよく見かけるのは、判断に必要な情報がそろっていないまま作られた事業計画です。
以下のような内容が含まれていないか、確認が必要です。

  • 賃料が35年間変わらない前提
  • 相場より高い賃料、楽観的な入居率
  • 修繕費や設備更新費が十分に計上されていない
  • 初年度のみの収支で、10年後・20年後の見通しが見えない
  • 売却・相続など、将来の出口(選択肢)の想定がない
  • オーナー様の年齢や家族状況に対して、無理のある借入設定

これらがあると、計画が成立しているように見えても、将来どこかで無理が出やすくなるので注意が必要です。

■ 4. 専門ツールを使って、条件をシビアに確認する

工事企画では、建築・不動産に特化した土地活用専用の事業計画収支ソフト(例:https://land-ps.biz/)を活用し、年数ごとの収支推移、税金、修繕、出口までを一体で整理しています。
このツールの特徴は、収支をよく見せることではなく、将来発生しうるコストを抜け漏れなく可視化する点にあります。
実際に、他社で作成された事業計画をこのソフトに落とし込むと、想定より利回りが低く出ることもあります。それは、修繕費や税金、将来的なリスクが十分に織り込まれていないケースがあるためです。

あらかじめ必要なコストを計上しておけば、実際の運用では「想定よりも余裕があった」と感じられる状況をつくることが出来ます。それが結果として、安心につながります。

賃料収支グラフ

上記のグラフは事業計画収支ソフトで自動作成する、負債と剰余金の年次推移の一例です。
グラフ化することで多くの情報が得られ、各案の比較やリスク検証が可能になります。2025年度税制改正に対応しています。

■ 5. 建築を事業として成立させる── 工事企画の土地活用手法

多くの建築計画では、まず事業予算が設定され、その枠の中で設計を進め、想定コストを超えた部分を後から調整していく、という流れになりがちです。
しかし工事企画は、そのさらに前の段階から関わります。

土地条件、市場利回り、売却出口、そして融資条件。
これらを整理したうえで、「どの規模なら事業として成り立つのか」「どこまでが安全圏か」を逆算しながら設計を組み立てていきます。計画段階で成否を見極め、事業として成り立つ形にすることこそが、私たちの役割だと考えています。

崖地での建築プロジェクトの事例

その象徴的な事例が、崖地でのマンション計画でした。
相続を視野に入れたプロジェクトでしたが、当初は総事業費13億円の大規模開発となっており、そのうち2億円が、擁壁を壊して平地に整備するための費用でした。

しかし、この前提のままでは事業計画収支は毎年約1,000万円の赤字となる計算でした。実際、この段階ですでに設計費用等として2,000万円以上を投じていたものの、金融機関の融資承認は得られず、計画そのものが頓挫しかねない非常に厳しい状況にありました。その段階で、私たちにご相談が寄せられたのです。

そこで、当社はまずお客様のご要望と当社の専門的なノウハウを擦り合わせるための「検討・共有期間(勉強期間)」を設けました。
過去の計画がなぜ行き詰まったのかを徹底的に分析し、土地の制約、相続の目的、そして銀行が求める収支基準を改めて整理し直したのです。このプロセスを経て、私たちは発想を転換しました。
擁壁を平地にすることを前提とせず、高低差そのものを特性として活かす設計へと方向性を再設定しました。

擁壁は、道路からの視線を遮るという利点があります。さらに、建物までのアプローチを空間演出として設計することで、敷地条件をむしろ価値へと転換する案としました。

結果として、計画規模そのものを見直し、総事業費を当初の13億円から3億円規模に再構築し、毎年400〜500万円の安定した黒字を確保できる事業計画へと転換しました。
事業としての健全性が明確になったことで、金融機関の融資承認も得ることができ、相続も見据えながら、ご家族が安心して進められる計画へと整えることができました。

擁壁イメージイラスト

イメージ画像

「成り立つ数字」から設計するという考え方

設計後にコストを削るのではなく、 最初から「成り立つ数字」を前提に設計する。 設計・施工・事業収支を切り離さず、透明性の高いコスト管理で組み立てること。 土地の特性を活かし、事業として持続可能かどうかを見極めながら進めること。 それが、計画段階から関わる私たちの価値だと考えています。

■ 事業計画収支プランは、納得して進むための準備

マンション・アパート経営を成功させるために必要なのは、数字を根拠に、自分自身が判断できる状態をつくることです。

事業計画収支プランは、将来を保証する資料ではありません。
しかし、建った後に起こり得ることを事前に想定し、
「それでも進められる計画かどうか」を考えるための大切な判断材料になります。
建てる前の段階で、事業としての見通しを整理しておくことが、結果として、長く安心して経営を続けていくことにつながります。
すでに計画案や収支表をお持ちであれば、「この前提で本当に大丈夫か」「見落としているリスクはないか」という視点で、一度立ち止まって見直してみてください。
納得して進める計画かどうか。
その確認こそが、後悔しない土地活用への第一歩だと、私たちは考えています。

もし私たちでお力になれることがありましたら、いつでもご相談ください。

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