■ はじめに|代表・掛川 将より
工事企画グループのコラムでは、これまでCMr(コンストラクションマネージャー)という仕事の考え方や、実際のプロジェクトを通じて私たちが大切にしていることをお伝えしてきました。
今回は少し趣向を変えて、私自身のことを書こうと思います。
経営者として10年。判断に迷ったことも、遠回りをしたこともあります。それでも、どんな局面でも手放さずにいた考え方が3つあります。「対等であること」「情報を絞ること」「やりたくない仕事を率先してやること」——この3つです。
普段、仕事の場でこういった話を表に出すことはあまりありません。ただ、工事企画という会社がなぜこういう動き方をするのか、その根っこを知っていただくことが、私たちを選んでくださる方への誠実さでもあると感じ、今回言葉にしてみることにしました。
少し長くなりますが、お付き合いいただければ幸いです。
■ 原体験|18歳の出会いが、すべての始まりだった
18歳のとき、人生に迷っていた時期がありました。そんな私に、兄が一冊の本を勧めてくれました。経営コンサルタントの大前研一さんの本です。
読み始めた瞬間から、何かが変わりました。世の中に対する見方が、180度変わったと言っても大げさではありません。「こんなふうに物事を考えるのか」という驚きと同時に、自分がいかに狭い視野の中にいたかを思い知らされました。これが、私の経営者としての原点です。
その後、大前さんが設立したビジネス・ブレークスルー大学(BBT大学)の一期生として入学しました。当時通っていた大学から編入してでも、一期生として学びたいと思ったのです。当時19歳。周りの学生のほとんどは社会人でした。その環境に刺激を受け、「自分も働かなければ」と感じ、実際に働きながら学ぶスタイルを選びました。BBT大学で学んだことはたくさんありますが、今でも一番大切にしていることは「質問する力」です。「喋る力じゃない、質問力なんだ」という教えを、当時の私は愚直に実践し続けました。
大学を経て就職したのは、建築業界のデベロッパーでした。理由はシンプルで、「一番きつい仕事を経験してみたい」という一心でした。土地の仕入れから資材の調達まで、1から10まで全工程を経験しました。そこで痛感したのが、建築業界のIT化の遅れと情報の不透明さです。ハードな現場でしたが、「この業界は面白い、そして変えられる」という確信がここで生まれました。
そして23歳のとき、もう一つの大きな出会いがありました。新宿に事務所を構える、とある経営者の方です。当時の私は実績も何もない若造でした。それでもその方は、私の話を対等なプロのものとして聞き、受け入れてくださいました。「自分でやってみたら面白いんじゃないか」——その言葉が、起業への後押しになりました。起業後は最初のお客様にもなっていただき、今も私が最も敬う恩人の一人です。
この出会いと経験が、これからお話しする3つの哲学の土台になっています。
■ 哲学1|「対等」という姿勢
私が経営において最も大切にしていることの一つが、「対等」という姿勢です。
この言葉の重みを、私は25歳のときに身をもって学びました。起業して最初の現場で、依頼した施工会社がその下の専門業者にお金を払っていないことが発覚したのです。現場に足を運ぶと、職人さんたちから「お金をもらっていない」と訴えられました。財務的にも問題ないはずの会社だっただけに、予想だにしない事態でした。「1件目から終わった、逃げ出したい」と思ったことを、今でも鮮明に覚えています。
それでも投げ出さず、関係者と粘り強く話し合いを重ねました。時間はかかりましたが、滞っていた問題は解決し、最終的には「いい建物」を完成させることができました。
あのトラブルの根っこにあったのは、上下関係の歪みでした。元請が下請けを対等な存在として見ていない。その歪みが、現場全体をおかしくしていく。建築業界は元請・下請け・二次下請けという階層構造が根強く残っており、立場の強い側が一方的に決め、弱い側は意見を言いにくい構図が今もあります。
だからこそ私は、意識的に「対等な場」を作ることを、仕事の出発点に置いています。設計士、施主様、施工会社、そして現場の職人さんまで、全員が対等なフィールドで意見を出し合えたとき、一番いいコストで一番いい建物ができる。これは10年間、現場で繰り返し確認してきた実感です。
どこか一つの組織が自分の利益だけを考え始めた瞬間に、プロジェクトは崩れていく。工事企画が掲げる「三方よし」——施主様、施工会社、そして社会のすべてにとって良い仕事をする——という理念も、突き詰めればこの「対等」という姿勢から生まれています。
■ 哲学2|学ぶ相手を絞り、徹底的に吸収する
二つ目は、情報を絞るということです。
起業して10年が経ち、SNSをはじめとする情報の量は当初とは比べものにならないほど増えました。さまざまな経営論、成功事例、専門家の意見——開けばいくらでも入ってきます。ただ、情報が増えるほど、自分の軸がぶれていくことも実感してきました。
そこで私が意識的に実践しているのが、あえて学ぶ対象を絞る「マンマーク」という考え方です。スポーツで言えば、一人の選手を徹底的にマークし続けること。経営に置き換えると、「この人だ」と決めた人物を一人に絞り、その思考や行動を徹底的に模倣するということです。
私の場合、その対象は大前研一先生、そして恩人である経営者の方、さらに現在師事している、「ビリギャル」の著者で坪田塾塾長の坪田信貴先生です。いろんな人の話を少しずつ聞くよりも、信頼できる一人にコミットする。器用ではない自分には、そのスタイルが合っていると感じています。
BBT大学時代に「質問する力」の大切さを学んだとき、私はそれを愚直に実践し続けました。周囲から「なんだこいつは」と思われても、とにかくやり続けた。不器用でも素直にやり切ることが、結果的に一番の近道だったと今は確信しています。情報を絞るというのは、その延長線上にある習慣です。
■ 哲学3|やりたくない仕事を、率先してやる
三つ目は、やりたくない仕事を率先してやる、ということです。
経営をしていると、「これをやっても利益にならないな」「正直、面倒だな」と感じる仕事が必ず出てきます。多くの場合、そういう仕事は後回しになるか、誰かに押し付けられるか、最終的に誰もやらないまま終わります。
私がこの哲学を持つようになったきっかけは、ある幼稚園との関わりでした。金融機関からのご紹介で始まったそのプロジェクトで、私は本業であるコスト削減とはまったく関係のない相談を受けました。「課外教室でどんな活動をすればいいか」「園の土地をどう活用すべきか」——正直、当時の私も「これをやっても利益にはならない」と感じていました。
それでも、全力でお手伝いすることにしました。
結果として、このご縁が後に大きな仕事につながりました。コスト削減とはまったく無関係な相談に真剣に向き合ったことが、深い信頼関係を生んだのだと思います。その後、この幼稚園との建築プロジェクトでは、最終的に9,000万円のコスト削減を実現しています(詳細はこちら)。
■ まとめ|3つの哲学が、工事企画をつくっている
「対等であること」「情報を絞ること」「やりたくない仕事を率先してやること」——この3つは、私が経営者として大切にしてきた個人の哲学であると同時に、工事企画という会社そのものの姿勢でもあります。
18歳で世界の見方が変わり、デベロッパーで業界の現実を知り、起業1件目でトラブルに直面しました。そうした経験の一つひとつが、今の考え方を形づくってきました。きれいごとではなく、泥臭い現場の積み重ねから生まれたものです。
建築の現場では、関わる人の姿勢が、建物の質に直結します。これからも、この3つを手放さずに、一つひとつの現場に誠実に向き合いながら、地域に必要とされる建築を支えていきたいと思っています。
(当記事執筆者:掛川 将)
工事企画グループが10年目の節目に考えていること、またコンストラクションマネージャー(CMr)として大切にしている役割について、以下の記事でも詳しく紹介しています。
10年目の節目に、工事企画グループとして考えていること
コンストラクションマネージャーとは?工事企画が考えるCMrの役割
当社代表・掛川がラジオ出演いたしました(YouTube公開中)
「これからの10年、どのような組織を築くのか。」 起業から現在に至るまで、迷いながらも決断を繰り返してきた経営者の本音を語っています。 建設業界の未来を見据えた、今の正直な想いをぜひお聞きください。
【経営者たちのラジオ】「工事の三方よし」とは?
ABCラジオ 2026/01/05
【経営者たちのラジオ】やりたくない仕事を率先してやる!
ABCラジオ 2026/01/12